店舗紹介(立地、外観、雰囲気)
東麻布にひっそりと佇む「天本」は、カウンター8席のみという贅沢な空間。凛とした和の設えの中に漂う緊張感は、店主・天本氏の一挙手一投足を舞台芸術のように感じさせる。ミシュラン二つ星、食べログGOLDといった肩書にふさわしく、予約困難ながらも鮨好きにとって憧れの聖地である。

コースやメニューの流れ
序盤のおつまみ
・桑名の白魚:鮮度の高さが光り、淡白ながら旨味が強烈に広がる。序盤から驚きを与える。
・竹岡のマコガレイ:塩と醤油で二段階の味わいを楽しむ。繊細な身質に職人技が宿る。

・ホタテ、イカ、カキ、このわた:次々と繰り出される海の恵みが、日本酒との相性を際立たせる。
茶碗蒸し・温物
・十三湖のしじみ茶碗蒸し:旨味が凝縮し、滋味深さが際立つ一品。
・天然白子:濃厚かつクリーミーで、見た目も美しい。

・のどぐろご飯:対馬産アカムツ「紅瞳」を使い、とろける身とご飯が絡み合う官能的な仕立て。
握り(前半)
・東京湾のヒラメ:艶やかで粘りある身質に悶絶。
・唐津のヤリイカ:丁寧な包丁が施された透明感ある握りは芸術品。

・サクラマス漬け:とろけるような口溶けと香り。

・コハダ(三日熟成):シャリと完全に一体化した江戸前の象徴。
・五島列島のサワラ:藁焼きの香ばしさが立ち上る。

・鳥羽の金目鯛:極上の脂が際立つ珠玉の一貫。
・箕島のサバ:赤酢シャリと見事な調和を見せ、迫力のある旨味。
握り(後半・名物)
・トリガイ:美しさと甘味が突出。驚きと感動を呼ぶ。

・マグロ三種(赤身・中トロ・大トロ):脂・香り・食感、それぞれの違いを堪能。

・宮古島の車海老:名物・飛び出す尻尾が圧巻。インパクトと旨味の両立。

・ウニ:濃厚ながら臭みがなく、上質そのもの。
・対馬の穴子:一匹から二貫のみという贅沢。香りと旨味が格別。
・玉子:ふんわりとした食感で、鮨劇場の幕を閉じる。
味わい・特徴の分析
天本の握りは、一貫ごとに味覚を更新する劇的な体験。熟成、藁焼き、漬けといった仕事がすべて必然性を持ち、ネタとシャリの調和が極まっている。江戸前の伝統を継承しながら、劇場型の演出で「鮨の極致」を体現する唯一無二の存在である。
お酒やペアリングの紹介
日本酒は「長珍」「今西」「大那」などに加え、「新政 No.6 X-type Essence」といった希少な銘柄も揃う。料理の流れに合わせて最適な酒が提案され、鮨の旨味を最大限に引き出す。序盤の肴にはシャンパーニュや白ワインも寄り添い、多彩なマリアージュを体験できる。

総評(価格・コスパ・印象・再訪意欲)
二つ星の名声に偽りなく、すべてが最高峰の鮨体験。5万円を超える価格は高額だが、それ以上の感動と没入感を提供してくれる。食べ終わった瞬間に「もう終わり?」と感じるほど、時間が溶けるように過ぎ去る。寿司好きなら必訪の至高の名店である。
訪問日:2018/02/22(夜)


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