店舗紹介(立地、外観、雰囲気)
六本木一丁目駅からほど近く、ANAインターコンチネンタルホテルとホテルオークラの間に位置する高級マンションの一角に「松川」はある。白壁に掲げられた小さな看板は控えめながらも圧倒的な存在感を放ち、訪れる者を非日常の静謐な世界へと誘う。店内は華美な装飾を排し、木の温もりと和の落ち着きに包まれた空間。料理を主役に据える設えで、座った瞬間から背筋が伸びるような緊張感と高揚感を感じさせる。予約から案内まで一貫して上質で、日本料理の頂点にふさわしい雰囲気が漂っていた。


コースやメニューの流れ
おまかせコースは季節の最高素材を惜しみなく繰り出す流れで進む。
- 前菜:間人ガニの甲羅盛と焼きガニ。内子・外子・カニ味噌・ほぐし身が重なり合う贅沢の極み。

- 蒸物:鮑とキャビアの蒸し物。ひと口で旨味が弾け、衝撃的な余韻を残す。
- 造り:鯛とカワハギ。素材の生命力を感じる至高の味わい。
- 椀物:丹波産松茸と蟹真薯の椀。香り・食感・出汁が三位一体となる完成度。

- 冷菜:イカのルイベ。氷上で引き締まった食感が冷酒にぴたりと寄り添う。

- 珍味:唐墨と辛味大根。中に餅を忍ばせる遊び心に技が光る。
- 蒸物:蓮根と甘鯛の蒸し物。蓮の実の食感と甘みが際立つ。
- 造り:蟹刺し。ふっくらとした身質と豊かな甘味が印象的。

- 焼物:すっぽんの焼き物。香ばしさと力強い滋味が広がる。
- 珍味:バチコ(ナマコの卵巣)。出汁と蕪の上に盛り付けられ、唯一無二の味覚を演出。

- 麺物:なめこおろし蕎麦。清涼感と洗練された香りが食後を整える。
- 鍋物:丹波松茸と近江牛のしゃぶしゃぶ。松茸と牛肉の旨味が溶け合い、究極の鍋に。

- 食事:いくら、生カラスミ、海苔、じゃこを赤出汁と共に食べ比べる贅沢なご飯。
- 甘味:焼き栗、柿とグレープフルーツのゼリー、ザクロの種。季節を映した締めの一皿。
味わい・特徴の分析
一品ごとに驚きと感動をもたらす構成で、全てが「日本料理の金字塔」と呼ぶにふさわしい完成度。素材の力を最大限に引き出す技術と構成力で、旨味の層が幾重にも重なり、食べ進めるごとに幸福感が増していく。盛り付けや器の選び方まで含め、料理人の哲学と美意識が細部にまで行き渡っている。
お酒やペアリングの紹介
合わせる酒はビールと厳選された日本酒。「蒼空」や「鄙願」といった銘柄は、繊細な料理を邪魔せずに引き立てる役割を果たす。特に松茸や牛肉といった強い旨味の素材との相性は見事で、料理と酒の調和を極めていた。
総評(価格・コスパ・印象・再訪意欲)
価格は6万円を超えるが、それ以上の価値を確実に体験できる超一流の和食。すべての皿に緊張感と幸福感があり、最後まで高揚が続く。お土産として渡される「じゃこ瓶詰め」は感動を自宅まで持ち帰らせてくれる粋な計らい。食後も余韻が続くのは「松川」ならではであり、人生最高の食事体験のひとつとして記憶に刻まれる。
訪問日:2017/11/08(夜)


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